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タイポグラフィ7つのルール その❷ 和文の美しさのカギは「つめる」こと

タイポグラフィ7つのルール その❷ 和文の美しさのカギは「つめる」こと

タイポグラフィ7つのルール 2 つめる
▼第4回

この章も終わりに近づきました。

前回は、欧文の詰め処理について、考察してきました。今回は、同じ和文でも、ここまで違うということを、詰め処理の観点からお話ししていきます。和文の奥深さを感じ取っていただければ、と思います。

第4回:通算第8回
もくじ
2.4 詰めてはいけない和文書体もある
2.5 [自動(メトリクス)]だけで済まない書体もある

2.4 詰めてはいけない和文書体もある

グラフィックでは、基本的に文章も詰めたほうが良いのですが、詰めてはいけない、あるいは詰めないほうが良い書体もあります。具体的には、モリサワの「新ゴ」、フォントワークスの「ニューロダン」に代表される、新しい感覚で作られたゴシック系の書体です。

なぜか。それは、

① 字面枠が大きいから
② ひらがな、カタカナのふところが大きく、字面枠いっぱいに設計されていて、漢字に迫るサイズになっている

からです。

字面枠が大きいと、ボディ(仮想ボディ)との距離が近いので、サイドベアリングが少なくなります。つまり、一文字ひともじの間が狭いのです。また、ひらがな、カタカナのふところが大きいのは、必然的に漢字に迫る大きさになるということ。
全体的に作りが大きく、詰めるには不向きな書体です。7Q~11Q くらいで使用する場合、[トラッキング]で[+10~20]程度広げる必要もあるかもしれません。ただし、見出しに使う場合は、話は別です。「適切」に詰める必要はあるでしょう。

(figure2-22)
詰めないほうがよい書体もあるが、見出しは別

2.5 [自動(メトリクス)]だけで済まない書体もある

現代的デザインの「新ゴ」や「ニューロダン」と対極をなす、字面枠の小さな伝統的書体の代表格にフォントワークスの「セザンヌ」、字游工房の「游ゴシック」があります。これらの書体は、伝統美といってよい美しい文字形状をしています。

伝統的な形状の書体は、明朝体、ゴシック体、毛筆体を問わずおおむね次のような特徴をもっています。

① 字面枠が小さい
② 漢字部首の両払い(左払い・右払い)が伸びやかで先端が鋭角
③ ひらがな、カタカナの作りが漢字に比べて、かなり小さい
④ 起筆に、明朝風の出っ張りがある(ゴシック体の場合)
⑤ 部首を構成する矩形の起筆、終筆が太くなっている

字面枠が小さいと、それに反比例してサイドベアリングが広くなります。したがって、詰める度合いも大きくなるわけです。

形状についての詳細な考察は、この “第1部:デザインが100%うまくなるタイポグラフィ7つのルール” の続編 “第2部:書体の性格(仮題)” に譲ります。

「セザンヌ、游ゴシック」の場合は、[自動(メトリクス)]で詰めた後、さらに[トラッキング]で[-20]くらい詰めるとより美しく見えます。この措置は、明朝体の伝統的書体、モリサワの「リュウミンKS」などにも適用できます。その他、毛筆系書体全般にも適用できます。

(figure2-23)
[自動(メトリクス)]だけで済まない書体もある

なお、伝統的書体とは、必ずしも制作された年代が古いというわけではないことを、お断りしておきます。

モリサワリュウミンに KS と KL がある理由

KSとは「かなスモール:小がな」の意で、1982年、手動写植機用として発売された書体がこれにあたります。
KLは「かなラージ:大がな」。その名の通り仮名が大きく現代的になっています。日常的に目にする印刷物や書類の「横書き化」に対応するために開発されています。KSと比較すると、仮名がかなり大きめなのがわかります。1986年の発売と記憶しています。大がなにしてサイドベアリングが狭くなった分、横組みした場合、たしかに見やすくはなっています。

現在のデジタルフォントは、KL基準となっており、KSはKO「かなオールド」と共に、仮名フォント「リュウミンStd」として販売されています。(何でモリサワの宣伝をしているんだろう…)

リュウミンは非常に完成度の高い書体ですが、KLはKSに比べ、総体的に可読性の面ではやや劣ります。その理由は“1.5 文字形状(グリフ)の構造を知る”の中で詳しくお話ししています。

(figure2-24)
モリサワリュウミンに KS と KL がある理由
(figure2-24)のキャプション

こうして並べてみると、両仮名のサイズがかなり違うのがわかる。計測してみると、およそ4%、KLのほうが大きかった。 4%というとかなりの数値である。

この、「4%」拡大が適切なのかどうか…。私は、個人的には「3%」でよかったのではと思っている。なぜなら、天地が漢字を超えてしまっている文字がかなりあるからである。

あとがき

詰めることは、タイポグラフィ(特に和文)の最重要課題といってよいでしょう。いうは易く、行うは難し。まさに難易度の高いテクニックです。とにかく、数をこなしましょう。頭ではなく、体で覚えることが何より先決なのです。

● ● ●

次回は、“タイポグラフィ7つのルール その❸ 息苦しいデザインの回避法は「あける」こと” をお話しします。ご期待ください。下の画像のクリックを!

次回予告 その❸ あける 息苦しいデザインの回避法は「あける」こと

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コメント

    • works014
    • 2017年 9月 19日

    ですので「[自動(メトリクス)]を使わなくても、この[プロポーショナルメトリクス]にチェックを入れると、同じように詰まる。」という部分も間違っています。

    • コメントありがとうございます。
      ご指摘のとおりですね。この部分削除しました。
      ありがとうございました。

    • works014
    • 2017年 9月 19日

    メトリクス(自動)とプロポーショナルメトリクスの違いは「誤差」ではありません。
    メトリクス(自動)は「プロポーショナルメトリクス」と「(ペア)カーニング」を同時に発動する機能です。
    ところが、手動でカーニングを(さらに)調整すると、
    カーソル直前の文字の「プロポーショナルメトリクス」が外れるということになります。
    なので、意図せぬ部分が「開く」のです。

    • 中嶋かをり
    • 2017年 9月 19日

    端物で、文字数の少ないキャッチやリードならおっしゃることもわかりますが、目的や一度に読む文字量をはっきりさせず、ただ詰めろ詰めろというのは誤解を招くと思います。
    やたらとなんでも詰めたがるデザイナーもどきには辟易しています。

    • コメントありがとうございます。
      おっしゃることはよく分かります。ただ、「文字数の比較的少ないグラフィック作品」と申し上げていると思いますが…。
      なんでもかんでも詰めるのは、私もすすめているわけではありません。
      考え方は、中嶋さんと違わないと思っております。拙い文章で、真意を伝えることができず、申し訳ありません。

    • works014
    • 2017年 9月 19日

    手ヅメの数値設定はそこではありません…ふたつ下の「テキスト」の「トラッキング」の項目のハズ。
    「トラッキング」とはなっていますが「カーニング」も共通しています。
    文字あるいは文字列を選択して反転していれば「トラッキング」、
    カーソルを字間に置いているだけなら「カーニング」がその設定値に応じて変更されます。
    また、「和文等幅」と「0」では異なります。
    「和文等幅」では欧文の「(ペア)カーニング」は発動しますが、
    「0」ではそれも発動しません。

    • コメントありがとうございました。
      誤認がありました。オブジェクトやパスの移動と混同していました。初歩的なミスでした。
      また、和文等幅と「0」については、書き忘れました。
      いずれも記事は書き直しました。
      大変申し訳ありませんでした。

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