タイポグラフィ7つのルール その❻ 細心の注意を払うべき大切な「くむ」こと

TYPOGRAPHY RULES

タイポグラフィ7つのルール その❻-1 細心の注意を払うべき大切な「くむ」こと

タイポグラフィ7つのルール ❻ くむ
▼第1回(通算第18回)

前章 “タイポグラフィ7つのルール その❺ 「ひく」ことは、すべてがマイナスではない” では、タイポグラフィ、いやデザイン全般にとって、見過ごされがちな「引く」要素についてお話ししました。

この章『タイポグラフィ7つのルール その❻ 細心の注意を払うべき大切な「くむ」こと』は、どちらかというと、グラフィックよりもエディトリアルに重きを置いた内容になっています。大見出し、中見出し、小見出し、本文といったものが頻繁に出てきます。だから、Illustrator より InDesign で説明したほうがいいんじゃないの? というお叱りを受けるかも知れませんが、ご容赦を。

グラフィックの仕事は、おそらく Illustrator を使ってされているかたがほとんどだと思います。デザインの自由度という点では、 Illusutrator は抜きんでて優れています。ただ、文字組みは得意とは決していえません。どちらかといえば苦手なのです。でも、グラフィックでは、本格的な長い文章を扱いません。そんな理由から、InDesign でデザインをするかたは、あまりいないのだと思います。

(figure6-1)
アプリケーションは「適材適所」で

しかし、本格的な長い文章を扱わないという、グラフィックの特徴が、文字組みの比重を軽く見てしまう遠因になっていると、私は考えています。
グラフィックデザイナーも、文字組みについては、きちんと学んでおかなければなりません。そんな考えから、この章を書きました。

文字組みを行う際は、以下のルールは最低限守りましょう。
文字組みもタイポグラフィの重要な要素です。すべては可読性を高め、見る人に「心地よさ」を与えるためのものです。退屈でしょうが、身につけていくよう強くおすすめします。

第1回:通算第18回
もくじ
6.1 テキストオブジェクトを使う
  6.1.1 ●ポイント文字とエリア内文字
  6.1.2 ●性質の違うもの同士を一緒にしない
  6.1.3 ●テキストオブジェクトの作りかた
6.2 テキストオブジェクトの揃え処理

6.1 テキストオブジェクトを使う

文章を組む場合は任意のサイズにテキストオブジェクトを作り、その中に流し込みましょう。
「テキストオブジェクト」の中に文字を流し込む[エリア内文字入力]そのものを知らずに、クリックした位置に入力する[ポイント文字入力]だけで仕事をしているかたを多数見かけます。

6.1.1 ●ポイント文字とエリア内文字

いったい、デザイン学校は何を教えているのかなと、首をかしげてしまいます。
文字組みをする際は、見出しなど1行ないし2行で収まるものは[ポイント文字入力]、複数行になることがあらかじめわかっている長い文章は[エリア内文字入力]と、役割を明確に使いわけましょう。

また、幸い[エリア内文字入力]を知っているかたでも、何でもかんでもテキストオブジェクトに詰め込んでいるのを本当に多く見かけます。
つまり、大見出し、中見出し、小見出し、文章を、同一テキストオブジェクトに入れてしまうやりかたです。

(figure6-2)
意外なくらい知られていない[テキストオブジェクト]

(figure6-2)のキャプション

いずれも文字組みの悪い例を挙げた。少し見づらいかと思うが、左下には[境界線]を表示させたスクリーンショットを載せてみた。

左上図は、大見出し、中見出し、本文いずれも[ポイント文字入力]で組まれている。本文は切れ目のよいところで改行をしている。これはこれでデザイン手法にはあるのだが、それが効力を発揮するのは、リード文などの、短い文章だけ。長い文章になると、右側が揃わないので大変みっともないものになる。

長い文章には[エリア内文字入力]を使用し、[段落]を[均等配置(最終行左揃え)]にしなければならない。(次節“6.2 テキストオブジェクトの揃え処理”に詳細)

右上図は、左上よりは「まし」だが、すべてを[エリア内文字入力]にしている。これだと、大見出し、中見出し、本文の微妙な行間を設定するのが大変になる。それに、[段落]が[左揃え]になっているので、本文の右側が揃わない。
これでは、[エリア内文字入力]にした意味がない。

6.1.2 ●性質の違うもの同士を一緒にしない

これは、デザインの自由度を著しく損ねます。なぜか? 役割の違う、デザイン処理の仕方が異なる部位を一緒にしてしまっているからです。見出しと文章の一番の違いは何だと思いますか? そう、サイズは勿論ですが、行間ですね。明らかに行間が違ってきますよね。ですので、それぞれの行間処理をテキストオブジェクトの中でしなければなりません。これは大変な作業でしょう。

テキストオブジェクトの中で同居させていいのは、せいぜい小見出しまで。それ以外の中見出し、大見出しは[ポイント文字入力]にして、本文と分離しましょう。そのほうがデザインの自由度が全然違います。ましてや仕上がりに雲泥の差がでます。

(figure6-3)
役割分担を適切に

(figure6-3)のキャプション

左上図は(figure6-2)の右図をそのまま載せた。これでは使いづらいし文章も右が揃っていない。

右上図は、大見出し、中見出しを[ポイント文字入力]、本文を[エリア内文字入力]にそれぞれ分けた。このほうが、細かい修正の自由度が増す。
大見出しは詰め組みや手詰めを施し、疑問符のサイズを上げ、ベースラインを整えた。詰めることで全体を大きくできる。また、中見出しとの行間を少し詰めた。

中見出しは、サイズを少し上げ、詰めをシビアにした。

本文は、サイズを上げ、[均等配置(最終行左揃え)]をし、[自動(メトリクス)]処理をした。左上図の本文を見れば一目瞭然だが、約物や英文がこれだけ混在すると大変見づらい。この不必要な空きや、英文とのバランスを矯正した。

見た目ではわからないが、かなりシビアな手作業をしている。後述する “6.6 状況によって悲惨、英文混在文章組み” の参照で理由がわかる。

6.1.3 ●テキストオブジェクトの作りかた

テキストオブジェクトの作り方は2種類あります。

① [長方形ツール]で任意のオブジェクトを書き、[文字ツール]を選択し、パス上をクリック(どこでも)すると、「テキストオブジェクト」に変わります。この際、オブジェクトは直前に行った作業を引き継ぐので、色がついたり、線が太くなったりしますが、気にする必要はありません。オブジェクトに色が着いていようが、線が太かろうが、クリックした瞬間に透明な「テキストオブジェクト」に変化します。

② [文字ツール]でオブジェクトを書く要領で任意のサイズにドラックした後、解除すると、それが即、「テキストオブジェクト」になります。

① の方法は、きっちりしたデザインをしたいとき、② の方法は、とりあえず作っちゃえという場合に適しています。なお、テキストオブジェクトは後で、自由に変形できます。

6.2 テキストオブジェクトの揃え処理

テキストオブジェクトを作成すると、パレットの[段落]は、デフォルト(一番左の[左揃え])になっています。

ウィンドウ>書式>段落

これを、真ん中(4番目)の[均等配置(最終行左揃え)]に変更します。これは必須の作業です。残念ながら、これを知らないかたも本当に多いです。
ちなみに、この違いを図で見てみましょう。

(figure6-4)
これも知られていない[均等配置(最終行左揃え)]

(figure6-4)のキャプション

(figure6-2)でも説明しているが、[段落]が[左揃え](左図)では、行末(横組みでは右側)が揃わない。和文は、約物や洋数字、英文が混在する場合がほとんどで、この不揃いは免れない。文章組みには、[段落]を[均等配置(最終行左揃え)]にすることが必須である。

しっかりした文字組みをベタ組みで行う場合は、横サイズの計算をしましょう。
たとえば、14Qで25字詰めの場合、

14Q(H)=14÷4=3.5mm(Qをmmに換算するときは、4で割ります:1Qが0.25mm、4Qで1mmになるため)
3.5×25(字)=87.5mm

横幅は87.5mmとなります。

この文章が、純粋な和文のみ(洋数字も欧文も混在しない)であれば、完璧なベタ組みができ上がります。この条件下のみ、デフォルトの[左揃え]でも大丈夫です。しかし、そんな文章はほとんどありえないので、[均等配置(最終行左揃え)]が重要になってくるのです。

つまり、通常の日本の文章は、漢字・ひらがな・カタカナ・数字・役物・欧文などが混然としており、おそらく、世界で一番組版が難しい国ではないかと思います。
[均等配置(最終行左揃え)]は美しい組版のための第一歩といえます。ただ、これだけで済まないのが、和文組版の悩ましいところです。

● ● ●

次回(第2回:通算第19回)は、組版上の最低限の推奨事項(明確なルールでないものもあるので敢えて「推奨事項}と呼びます)についてお話しを展開していきます。

その6-2 取りあえずこれだけ知っておこう、組版上の推奨事項

第2回:通算第19回
予告
6.3 美しい紙面を作る8つの文字組み推奨事項

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