タイポグラフィ7つのルール その❻-5 和文組版美しさの原点・縦組みで起きるさまざまなこと

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タイポグラフィ7つのルール その❻-5 和文組版美しさの原点・縦組みで起きるさまざまなこと

タイポグラフィ7つのルール ❻  くむ
▼第5回(通算第22回)

前回は、エディトリアルとグラフィックの違いや、英文混在文章・英文単独文章の組版上の問題点などをお話ししてきました。
今回は、主に、縦組み上の問題点について語っていきます。

第5回:通算第22回
もくじ
6.8 縦組みの際の洋数字・英文の扱い
  6.8.1 ●洋数字の縦組みはどのように?
  6.8.2 ●美しい和文は中心線が揃っていること
  6.8.3 ●横組み英文のベースラインをずらす
  6.8.4 ●縦組み英文もベースラインをずらす
  6.8.5 ●英文のずらしの目安
6.9 見えない升目が和文の美しさの根源
  6.9.1 ●複雑な要素の集合体、和文の組版

6.8 縦組みの際の洋数字・英文の扱い

縦組み用の英文・洋数字は、デフォルトの状態では、両方とも自動的に270°に回転します。
英文は、通常は270°回転したまま使用しますが、洋数字は、特別に指定がない限り、[書式][文字]❶[縦組み中の欧文回転](figure6-19❶)を掛けて270°回転を解除します。というより、洋数字は本来、縦組みにしたら、和数字に変えなければなりません。

ここでは、「クライアントの指定で、和数字に変えずにそのまま使用する」ことを前提にします。

(figure6-19)
縦組みの際の洋数字・英文の扱い

6.8.1 ●洋数字の縦組みはどのように?

[縦組み中の欧文回転]は、[エリア内文字]ごと選択すると、英文・洋数字のすべてが回転を解除されてしまいます。さきほどお話しした通り、英文は270°回転したまま使いますので、大変都合の悪いことになります。つまり、見られたものじゃないのです。

ですので、[縦組み中の欧文回転]は、洋数字部分のみ「範囲指定(ドラッキング)」をして適用します。その際、2桁の数字のみもうひと手間かけます。

[縦組み中の欧文回転]の下に❷[縦中横](figure6-19❷)があります。2桁分の数字を「範囲指定(ドラッキング)」して、これを適用すると、縦に並んでいたものが、横に並んでくれます。横組み状の2桁数字になるんですね。これでだいぶ見やすくなったでしょう? 2桁数字は縦に並んでいると非常に見にくいのです。([縦中横]には[縦組み中の欧文回転]の機能も含むので、いきなり[縦中横]でも大丈夫)

(figure6-20)
洋数字の縦組みの仕かた

さて、それで安心はまだ早いですよ。書体によって多少の変動があるものの、洋数字は[縦中横]を使うと、少し下がってしまいます。つまり、数字の上の空間(サイドベアリング)が、下の空間より広くなります。これはカッコ悪い!

また、「11」を除く「10~19」は右によって見えます。そして、2桁目に「1」がくる数字、つまり「21、31~91」は逆に左に寄って見えます。これは「1」の形状に原因があります。

これは直しましょう。ただし、カーニングでは直りません。[縦中横]の下に❸[縦中横設定…](figure6-19❸)というのがあります。これを使います。目的の2桁数字をドラッキングしたままにして、[縦中横設定…]をクリックするとダイアログがでてきます。

[上下位置]と[左右位置]があります。[プレビュー]にチェックを入れ、▲▼どちらかをクリックしていくと、ドラッキングした2桁数字が動きます。見た目の作業です。フィットする位置にきたら[OK]で完了です。
ダイアログが目的の数字を隠してしまうことがあります。一番上の[縦中横設定]のバーをつかむと移動できますよ。

(figure6-21)
縦中横の数字の位置を調整する[縦中横設定…]

3桁以上の数字は、縦に並んだままで大丈夫。ただし、桁数の多い数字は、間に漢字を入れて補う必要があるかもしれません。たとえば、「124700」の場合、「12万4700」のように。「12」が2桁になっちゃいました。[縦中横]を適用し、[縦中横設定…]で位置を直しましょう。

なお、[縦組み中の欧文回転][縦中横]の解除は、同じダイアログに戻り、それぞれをクリックすればOK。[縦中横設定…]の解除はダイアログの数値を「0」にします。ここを解除しないで[縦中横]の解除をすると組みが崩れます。また、横組みに変更した場合、正常な位置に戻りはしますが、数値は入ったままなので、エラーの原因にもなりかねません。[縦中横設定…]の解除は必ずしましょう。

6.8.2 ●美しい和文は中心線が揃っていること

日本人が文章を見て美しく揃っていると感じる基準位置は、横組み、縦組みとも文字の中心にあります。書体デザイナーはボディ(仮想ボディ)・字面枠の中心に入って見えるよう調整しながらグリフをデザインしていきます。

厄介なことに和文は、「上に寄って見える文字」「下に寄って見える文字」「左に寄って見える文字」「右に寄って見える文字」「左上に寄って見える文字」…と、さまざまなクセがあります。だから、中心に入って見えるように調整することは必要不可欠なのです。

もし、機械的・数値的にすべて字面枠の中心に入れたフォントで文章を組んだら、とても見られたものではないものができあがります。それだけ、「感覚的」に中心に入っていることが重要なのです。

6.8.3 ●横組み英文のベースラインをずらす

ところが、英文が混在してくると、揃えの基準位置は一変します。特に横組みは根底から覆ります。

和文フォントの「ベースライン」が、なんとも中途半端な位置にあるのを不思議に思ったかたも多いと思います。「縦組みは左右の中心にあるのに、何で?」と。そう、「上下の中心にすればいいのに…」ですよね。でも、この「中途半端な位置」に意味があります。ある意味、絶妙な位置なのです。

和文の横組み用のベースラインは、英文との混在を意識して中心よりかなり下(慣習的にボディ下部より120em上がったところ)に設けられています。この位置は何を基準に設けたのか不勉強でわかりませんが、一応英文との並びが揃うようになります。

ありえないことですが、もし、和文のベースラインが上下の中心だった場合、英文が入ってくると(figure6-22❶)のようになってしまいます。これはさすがにひどいしまずいですね。

横組みの場合の英文は、書体にもよりますが、だいたい、和文より上がって見えます。これは、欧文の特殊な構造に原因があります。欧文は、〔3層構造(私が勝手に付けた呼び名)〕になっています。すなわち、

アセンダーライン・キャップラインからミーンラインまで
ミーンラインからベースラインまで
ベースラインからデセンダーラインまで

の〔3層〕です。

そのうち、③のベースラインからデセンダーラインまでに入る文字は、g, j, p, q, y の5文字しかありません。「g」と「y」は比較的使用頻度は多いものの、当然、総体的な数が少ないので、文章の中で使用される頻度も低いのです。したがって、圧倒的に多い、①・②に該当する文字で文章が構成されるので、印象的には、上の〔2層〕で実質的に文章が組まれているように錯覚します。(figure6-22❷)

なお、書体にセットで組み込まれている欧文は、ほとんどの書体がこの「ズレ」を考慮に入れて設計されているので、あまり矯正する必要はありません。

(figure6-22)
ベースラインの位置のあれこれ

6.8.4 ●縦組み英文もベースラインをずらす

さて、実は、縦組みでも英文はずらす必要があります(figure6-22-2❶・❷)。英文のベースライン位置は縦組みにしても、基本的な位置関係は変わりません。つまり、和文ボディの左から120em右に寄った位置(横組みは下から120em上がった位置)になります。270°回転しただけのことです。

(figure6-22-2)
縦組みの際の欧文の位置処理

(figure6-22-2)のキャプション

縦組みも英文ベースラインのずらしは必要である。右下段の文章は、英文のベースラインを右にずらして矯正してある。

右上段の組み見本と比較すると、「大文字が右に寄り過ぎではないか」との意見もあるかと思うが、和文内の英文は綴りより先にブロックとして目に入ってくる。したがって、全体的には下段のほうが違和感が少ないはずである。

この状態でフォントはプログラムされているようです。(私はプログラマーではないので、詳細はわかりませんが)そのため、縦組みにしたとき、英文はひどく左に寄って見えます。この原因は、欧文の作り(figure6-22❷)にあります。

英文は、縦組み和文の中に入ると、図の〔2層目〕すなわち、小文字だけがより目立つようになります。この位置が、かなり左に寄って見える元凶になっています。横組みでは、さほど気にならない〔2層目〕の下がり(寄り)が、なぜ、縦組みでは強調されてみえるのでしょうか。その原因は、私は2つあるように思います。

一つ目は、日本人の縦組みの美意識。縦組みは、日本人の「遺伝子レベル」で定着しており、横組みとは比較にならないほど、中心線が揃っていないと不快感を感じます。

二つ目。文章の大半を占める、ひらがなの構造にあります。“1.6.4 ●和文は、縦組み用にできている(figure1-10)” での説明を覚えていますか? ひらがなは縦長方形の文字種が圧倒的に多かったですね。中心に整然と配置されている縦長方形と、どう見ても左に寄っている英文小文字〔2層目〕の位置との落差が激しいのです。この落差が不快感を呼びます。

6.8.5 ●英文のずらしの目安

横組みは、漢字に対して英文の大文字が、上下の中央に見えるように下げます。

縦組みは、漢字の右側に英文の大文字の上部が並ぶ感じに右にずらすと良いでしょう(figure6-22-2❶・❷)。小文字を中央に持ってこようとして、右にずらし過ぎないように。単純に中央にずらせば良いわけではないのです。けっこう高度な感覚が要求される作業です。

6.9 見えない升目が和文の美しさの根源

和文は、活字を使った活版印刷の時代から、正方形に1文字という原則が守られ、続いています。この原則は、漢字を使って行く限り未来永劫変わることはないでしょう。

この正方形という見えない升目を日本人は意識します。これが整然と左から右、上から下という具合に、透明な原稿用紙の中に文字が並んでいるような姿が、日本人は美しいと感じるのです。ですので、これが崩れると、途端に違和感を感じるようになります。

(figure6-23)
見えない升目が和文の美しさの根源

(figure6-23)のキャプション

赤で塗りつぶした句点【、】は[行頭禁則文字]のために、前の文字「に」が道連れで追い出された。
そのあおりで、前の行は、追い出した「に」の代用で、文字間を割らなければならない。

原稿用紙のマス目があると、その違和感がより強調される。しかし、日本人は頭の中で、無意識にこの原稿用紙を描く。結果、マス目からはみ出るととても不快に感じるような繊細さを持っている。

6.9.1 ●複雑な要素の集合体、和文の組版

もう、何回もお話ししている通り、和文は、和文だけでも漢字・ひらがな・カタカナ・たくさんの種類の約物と、異質な文字の集合体です。これだけでも大変なのに、そこに加えて、洋数字、英文が混在してくるのですから、見やすい組版をするのは、至難の業なのです。

それだけに、それぞれの文字種の特徴や性格などを知り、適切に「くむ」ことができれば、英文デザインを凌駕するデザインを実現できます。その証拠に、日本のデザインの水準は、世界有数であるとの評価を諸外国から受けていることが、その事実を物語っています。

● ● ●

次回(第6回:通算第23回)は、その誇るべき和文の「文字(書体)の性格」をお話しします。ここでは、その概略に簡単に触れておき、この “第1部:デザインが100%うまくなるタイポグラフィ7つのルール” の続編、“第2部:書体の性格(仮題)” で詳述することになると思います。

その❻-6 書体には「性格」や「表情」、そして「適性」がある

第6回:通算第23回
予告
6.10 書体の性格を知る

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